currencybuilding、名前の由来。

先日、ゲゼル研究会主催の斉藤賢爾さん著『不思議の国のNEO──未来を変えたお金の話』の出版記念講演を聞きにいきました。
この講演を知ったのは、はてブの整理をしていたときでした。私のテーマ的に要マークだった斉藤賢爾さんのプロフィールのあるページをはてブしようかなと思って検索していたら、たまたま本の出版記事を見つけました。おっと、講演もある。例によってid:sakamataさんにチャットで聞いてみると、ほら、この記事にあるキーワード、私たちとのシンクロ率が高い、と一緒にキーボード叩きながら驚いてました。

当日は、SNSなどで呼びかけ合った仲間と連れ立って参加しました。懇親会にもお邪魔させていただき、とても楽しい有意義な一日を過ごせました。
講演は、出版した本のネタばれにならないように、本の物語には触れず、計算機科学者としての斉藤さんが、このテーマをどのようにとらえ、どんな姿勢で取り組み、そして見いだした課題や希望が含まれたメッセージでした。
計算科学は多くの面で経済的な問題を扱います。加えて、P2Pもまた経済と密接なつながりがあり、計算科学者として、金儲けではなく、科学という姿勢で経済の問題に取り組もうと思ったとの言葉に共感しました。
職業プログラマーである私も、私のもっている技術や興味が、これらの課題にもっとも近いような気がしていて、関わらないではいられないという気持ちで続けてきました。そして、その気持ちが一巡した感覚になったのが、講演の受付で本を受け取ったときでした。本の帯に坂本龍一さんのコメントがあったのです。
2年前、私が『エンデの遺言』に出会えたのは、プログラマーな視点から通貨というしくみそのものに興味を持って、書店で経済関連書籍の背表紙を目で追っていたときです。ふと、私のお気に入りのミュージシャン、坂本龍一という名前が目に飛び込んできました。え、なんでこんなところに?と、『エンデの警鐘』が『エンデの遺言』と一緒に並んでいました。ハードカバーだったのに、迷わず2冊とも購入。そこからゲゼルやリエターを知り、一気に、視界が広がりました。そして、もっと、この問題に目を向けた人と出会いたいと思い、currencybuildingという名前でブログを書き始めました。このブログは、私へ期待以上のスピードでハッピーな出会いをもたらしてくれました。そこから巡り巡って、再び坂本龍一さんのコメントに出会うとは。ジーンと来ました。

懇親会では、私のcurrencybuildingという名前に反応してくれた方がいました。currency、current、大局とか潮流という意味も含まれているよね、と、まさにそれは講演のサブテーマ的キーワードでした。言われて気づきましたが、そういえば、moneybuildingとしなかったのは、「流れ」のような要素を入れたかったからかもしれません。
buildingとしたのは、プログラミングでビルドするという用語があるのと、実は、『船を建てる』(鈴木志保さん著)という漫画の英語タイトルを参考にさせてもらいました。この漫画は名作らしいのですが、私はタイトルや登場するあしかの名前が気に入って復刻版で読みました。ほんわか不思議な漫画です。

と、currencybuildingの名前の由来はこの程度のことだったのですが、最近、言葉をいろいろと覚えました。出会った方々の刺激を受けて。今のマイブームは哲学です。科学史は受講したことがあるのですが、一般教養では経済、心理、宗教の順に興味があったので、哲学まではカリキュラムに組めませんでした。半年の講義で、それほどのものが学べるとは言いませんが、哲学はまるっきりだったようで、科学史にも登場するライプニッツを尊敬するのがせいぜい。そんな私が、例によって書店の哲学関連書棚で発見したのは、現代哲学があるということ。何を今更、なんですが、教科書に残りそうな哲学者が今も活動しているというのが驚きでした。
書棚の雰囲気を見る限り、今、哲学は軽いブームじゃないですか?そして、もっとも注目を浴びているのがデリダかな。そう、脱構築です。単語は、buildingではなくdeconstractionだけど、構築とか構造とか、社会をそういうフレームでとらえていく思考が面白いですね。うわっぺらしか追えてませんが、私たちが今感じていることは、そこそこ現代哲学者たちによって体系的に論じられているというのが分かったし、また、その哲学が社会へフィードバックすることで私たちの思考に少なからず影響していることを感じる事もできた。
でも、勉強した事を「昔の人は言いました。」と、ただ思考をトレースするだけじゃつまらない。プログラマーとしての私は組み立てることに楽しみを感じます。それも、一人でなく、大勢の人とオープンに。ウェーブという情報の伝搬だけでなく、カレントという潮流を。そして、ソリューションよりも先のテーマをハッピーに。
そう取り組みたいと思い直したcurrencybuildingでした。