ムードボード

本ブログのテーマは制作のフェーズに入っていますが、昨年からイラストやデザインを手がけるクリエーターの方々とお話できる機会がありました。
私はプログラマーでありながら、デザイナーさんと密にお仕事をする機会にめぐまれていませんでした。いつもは、提示される仕様の機能を実現できる最低限のデザインですませることが多く、地味な出来映えばかり。それでなんとかやれてきたというのもあるのですが、使い勝手や心地よさという課題に取り組めない状況が続くうちに、デザインに関しては、若干、コンプレックスのようなものを持ってしまっていたようです。まあ私には無理だろうな、とか、まずは機能重視さ、とかの発想をしてしまうのです。
そんな中、人に影響されやすい私が、クリエーターの方々とお話するうちに、デザインに対するコンプレックスが解けていく感じがしました。なんか知りたい、と思うようになったのです。近くの本屋で、デザイン関連の棚をブラウズするくらいまで。
見つけたのは、インタラクションデザインという分野でした。狭くとらえると、ユーザーインターフェースなんですが、Wikipediaで見ると、それはもっと広くいろいろなことに応用できそうな感じです。
その名も「インタラクションデザインの教科書」という本を購入し、つまみ読みしたところ、なんて基礎的なことを私は知らなかったんだろうと身につまされました。
例えば、データの構造をなるべく崩さずユーザーインターフェースの設計に反映しようとする行為は、必ずしも正しくはないということ。これは、私にとってがく然ですね。今まで本当にデザインを知ろうとしていなかったことが分かりました。
10年前、科学にしか興味がなかった私が、経済も勉強しなきゃと思ったときの感覚を思い出しました。プログラミングとデザイン、お隣さんのはずなのに、こんなにも違っていたなんて。でも最近は、経済も勉強していくと、物理と同じだったんだと考えるようになったので、いずれ、プログラミングとデザインの双方で応用ができるときがやってくるのかもしれません。
コンプレックスが解けながら、そんな感じをもったのは、教科書の中の「デザインの技術」という項目を目にしてからでした。この項目は、デザインが私には無理な事はない、と感じさせてくれます。プログラムがいきなりホイと複雑なものができることがないように、デザインもまた素晴らしいものがホイとできるわけではない。一つ一つ積み上げていく技術、ノウハウがあることがわかったのです。
そのなかで、まったく知らなかった技術、「ムードボード」。
デザインをする前に、デザインするイメージに合った素材や写真を見つけてきて、それをコルクボードなどに貼付けたものをムードボードというそうです。このムードボードで、依頼主のイメージを共有したり、漠然としたイメージが具体的な素材や写真を通してデザインに反映させることができることが技術だとしているのです。
これを知ったときは感激でした。プログラミングが、文法だけを知って、ゼロから書き始めることがどれだけ難しいかを、私は知っています。デザインも同じ様に、ツールの使い方と自分のセンスだけで物を作り上げることが難しく、だから技術があるんだ、ということが分かりました。うん、やっぱりお隣さんかも。